大学生の扶養には「税金上」と「社会保険上」の2種類がある
まず大前提として、「扶養」には性質の異なる2つの制度があります。
- 税金上の扶養:親(扶養者)の所得税・住民税が軽減される仕組み。子の年収に応じて、親が受けられる控除額が変わります。
- 社会保険上の扶養:学生本人が保険料を払わずに、親の健康保険証を使い続けられる仕組み。一定の年収を超えると、自分自身で国民健康保険や国民年金に加入する必要が出てきます。
この2つは判定基準も影響範囲もまったく別物です。「103万円の壁対策は大丈夫だったのに、社会保険の扶養から外れた」ということが起こるのはこのためです。それぞれ順番に見ていきましょう。
まずは全体像を一覧で確認
| 壁の名称 | 関わる制度 | 大学生(19〜22歳)への影響 |
|---|---|---|
| 103万円の壁 | 税金上の扶養 | 実質的に解消。給与収入159万円まで満額控除、それ以降は少しずつ控除額が減っていく(特定親族特別控除) |
| 106万円の壁 | 社会保険上の扶養(勤務先の社保加入) | 学生は基本的に対象外 |
| 130万円の壁 | 社会保険上の扶養(親の健康保険) | 19〜23歳未満は150万円未満まで緩和 |
| 住民税非課税ライン | 学生自身の税金 | 目安として年収110万〜120万円前後 |
| 所得税非課税ライン | 学生自身の税金(勤労学生控除適用時) | 基礎控除等の引き上げにより非課税枠が拡大 |
数字が多く混乱しやすいので、まずは「税金の話」と「社会保険の話」が別物であることを意識しながら、以下で一つずつ詳しく見ていきましょう。
税金上の扶養の壁(親の税負担に関わるライン)
19歳以上23歳未満の学生は、税制上「特定扶養親族」という区分に該当します。一般の扶養親族よりも控除額が大きく設定されており、親にとって税負担の軽減効果が特に大きい年代です。
これまでは、子の年収が103万円を超えると親の扶養控除が受けられなくなる「103万円の壁」が大きな壁として意識されてきました。しかし、税制改正により「特定親族特別控除」という制度が新設され、19〜22歳の学生については、年収が103万円を超えても親の税負担が急に増えるのではなく、収入に応じて段階的に控除額が減っていく仕組みに変わっています。現在では、子の給与収入が159万円までであれば親は満額(63万円)の控除を受けられ、それを超えても一定の収入水準までは段階的に控除が残る仕組みになっており、以前のように「103万円を1円でも超えたら控除がゼロになる」という崖のような仕組みではなくなっています。
社会保険上の扶養の壁(親の健康保険)【2025年10月改正】
社会保険上の扶養は、税金上の扶養とは別に判定されます。ここでよく登場するのが「106万円の壁」と「130万円の壁」です。
106万円の壁は、学生には基本的に関係ない
「106万円の壁」は、勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する義務が生じるかどうかのラインです。賃金月額8.8万円以上、従業員規模51人以上などの条件がありますが、この条件には「学生ではないこと」が含まれています。つまり、多くの大学生はこの106万円の壁の対象外であり、勤務先の社会保険に強制加入となるケースは基本的にありません(夜間部・定時制の学生など一部例外はあります)。
130万円の壁は、19〜23歳未満なら150万円まで緩和
一方の「130万円の壁」は、親の健康保険の扶養に入り続けられるかどうかを判定する、より一般的なラインです。通常はこの金額を超えると、自分で国民健康保険・国民年金に加入する必要があります。
ただし、19歳以上23歳未満の学生については、被扶養者認定基準の見直しにより、この年収要件が150万円未満まで引き上げられています。つまり、大学生年代であれば、130万円を多少超えても150万円未満であれば扶養にとどまれる可能性があるということです。ただし、19歳以上23歳未満という年齢要件は「その年の12月31日時点」で判定されるなど細かいルールがあり、加入している健康保険組合によって収入の算定方法などの実務的な運用に差が出る場合もあるため、実際に適用されるかどうかは親の勤務先の健康保険組合に確認するのが確実です。
「見込み年収」で判定される点に注意
社会保険上の扶養は、1月〜12月の実績年収ではなく、「向こう1年間の見込み年収」で判定されるのが税金上の扶養との大きな違いです。また、通勤にかかる交通費の扱いにも注意が必要です。130万円・150万円の壁(親の健康保険の扶養認定)では、交通費も収入に含めて判定されるため、「基本給だけなら大丈夫」と思っていても、交通費を含めると壁を超えてしまうケースがあります。一方、106万円の壁の判定では交通費は含まれません。壁の種類によって扱いが異なる点を押さえたうえで、事前に月あたりの収入目安を計算しておくことが大切です。
学生自身にかかる税金(所得税・住民税)
扶養の話とは別に、学生自身にも所得税・住民税がかかる場合があります。
所得税は、基礎控除などの引き上げにより、一定の年収までは課税されない仕組みになっています。一方、住民税は所得税よりも低い年収から課税が始まる自治体が多く、目安としては年収110万〜120万円前後を超えると住民税が発生するケースがあります。
ただし、学生には「勤労学生控除」という制度があり、これを申請することで所得税の非課税ラインを引き上げることができます。制度の詳細な適用条件や具体的な金額は年度によって変わる可能性があるため、確定申告や年末調整の時期に最新情報を確認することをおすすめします。
扶養から外れると、実際どのくらい負担が増えるのか
「扶養から外れる」と聞くと漠然と不安に感じるかもしれませんが、具体的にイメージしておくと安心です。
- 税金上の扶養から外れた場合:親の所得税・住民税の負担が増えます。増加額は親の所得水準によって変わりますが、年間で数万円〜十数万円程度の負担増になるケースが一般的です。
- 社会保険上の扶養から外れた場合:学生自身が国民健康保険料・国民年金保険料を負担することになります。国民年金保険料は毎月定額(年度により金額が改定されます)で、国民健康保険料は前年の所得等に応じて計算されます。
どちらも「絶対に避けるべき」というものではなく、稼いだ分と負担増を天秤にかけて、自分にとって納得できる働き方を選ぶことが大切です。むしろ、稼げる金額が増えるメリットの方が大きいと判断する人も少なくありません。
リゾートバイトで稼ぐ場合に気をつけたいポイント
ここまでの制度を踏まえたうえで、リゾートバイトのように短期間で集中的に働くスタイルならではの注意点も押さえておきましょう。
繁忙期に稼ぎすぎて、扶養から外れてしまうリスク
リゾートバイトは、住み込みで長期休みに集中して働くスタイルが中心です。短期間で効率よく稼げる分、「気づいたら年収の壁を超えていた」という事態が起こりやすい働き方でもあります。特に、複数の求人先を掛け持ちしている場合は、すべての収入を合算して判定される点に注意が必要です。
事前に「見込み年収」を計算しておく
社会保険の扶養は見込み年収で判定されるため、リゾートバイトに応募する前に、時給・勤務期間・勤務日数から大まかな年収の見込みを計算しておくと安心です。長期休みだけ働きたい人は、その期間の収入が年間の壁を超えないかどうかを事前にシミュレーションしておきましょう。
たとえば時給1,600円の求人で、夏休みの2ヶ月間(1日8時間・週5日勤務)だけ集中して働いた場合、その期間だけで50万円前後の収入になります。他の時期にも別のアルバイトを掛け持ちしている場合は、その収入も合算して年間の見込み額を計算する必要があります。「長期休みだけ働くから大丈夫」と思い込まず、年間トータルでの試算を習慣にしておくと安心です。
社会保険の加入条件や扶養の仕組みについては、こちらの記事もあわせて参考にしてください。
よくある質問
Q. 106万円と130万円、結局どちらを気にすればいいですか?
A. 多くの大学生は「106万円の壁」の対象外(学生除外規定があるため)です。気にすべきは主に「130万円の壁(19〜23歳未満は150万円)」と「税金上の扶養(103万円・特定親族特別控除)」の2つです。
Q. 扶養から外れると、具体的に何が変わりますか?
A. 税金上の扶養から外れると、親の所得税・住民税の負担が増えます。社会保険上の扶養から外れると、学生自身が国民健康保険・国民年金への加入手続きを行い、保険料を自分で支払う必要が生じます。
Q. アルバイトを掛け持ちしている場合はどう計算すればいいですか?
A. 税金上・社会保険上どちらの判定でも、複数のアルバイト収入は合算されます。1つの職場の収入だけで判断せず、全ての収入の合計で壁を超えないか確認しましょう。
Q. 制度は今後また変わりますか?
A. 年収の壁に関する制度は近年たびたび見直されています。この記事の内容は執筆時点の情報のため、応募前には親の勤務先の担当部署や税務署など最新の情報源で確認することをおすすめします。
まとめ
大学生の扶養には「税金上」と「社会保険上」という2つの異なる制度があり、それぞれ判定基準やボーダーラインが違います。106万円の壁は多くの学生には直接関係せず、130万円の壁も19〜23歳未満なら150万円まで緩和されているなど、制度は年々変化しています。正確な情報は年度によって更新される可能性があるため、不安な場合は親の勤務先の担当部署や税務署に確認するのが確実です。
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